古本屋へ行くと必ず目にとまってしまうその装幀は、洋画家 佐野繁次郎によるものだった。見つけ次第、手に入れることにしている。魅力は何と言っても、佐野さんの書く〈文字〉でしょうね。決して綺麗な字とは言えないけれど、なぜだか安心を感じる。親近感のある、あたたかな印象。既視感と言ってもいいのかもしれません。
園制作時、佐野さんの装幀を皆に見せるとすぐ気に入ってくれたので、園でも随所に手書き文字を取り入れた。あの「暮らしの手帖」を作り出した花森安治氏も、佐野さんの元で働いてか大きく影響を受けており、手書き文字を応用しています。
春、私たちは花森さんの元で働いていた小樽雅章氏の講演に足を運んだ。花森さんは〈なかのひとりはわれにして〉を掲げ、社員たちに〈教えてやるというような上からの目線に決してなってはいけない〉と語ったという。その考え方は、私たちにとっても非常に胸に響くもので、まさに目指すところでした。そのような低い目線というスタイルは、花森さんも佐野さんから自然形で学んだのではないでしょうか。
佐野さんは長く、銀座のタウン誌〈銀座百点〉の装幀も手がけていました。洋画家としてのモダンさと街を任せられるだけの親しみと優しさが、佐野さんにあったからなのかも。園にも、佐野さんの装幀から感じ、学んだものを継承していきたい。 ……江原
(写真:江原が収集している佐野さんの装幀本の一部)